脳・神経

運動麻痺の評価法:ブルンストロームの正しい評価法を徹底解説!

こんにちは、CLINICIANSの代表のtake(@RihaClinicians )です!

今回は運動麻痺の評価法として非常に有名なBrunnstrom Recovery Stage(以下ブルンストロームステージ)について詳細にご説明します。

ブルンストロームステージは、Signe Brunnstrom(シグネ ブルンストローム)が片麻痺の運動療法 [ シグネ・ブルンストローム ]の著書で紹介した運動麻痺の回復段階の評価方法です。

非常に古いですが、評価が簡便であることや回復段階が経時的に評価できること、予後予測にも使用できるなどの利点から臨床でよく使われています。

ブルンストロームステージの評価は原著通り正確に行えなければならない

僕もこの評価は毎日使用していますが、ブルンストロームステージの本に記載されている内容は忘れることが多く、評価がオリジナルになってしまうことがあるので今回は自分の確認用にしっかりまとめています。

原著通りに評価を行わなければ、以下のような問題点が出てくるので評価は原著通り正確に行えるように気をつけなければなりません。

〜原著通りに評価できなければ起こる問題点〜

・検者間の評価方法が異なってしまうために同じ評価を行っても検者間の評価結果が異なってしまう

・評価に再現性がないために結果を元に治療効果判定や経過を追うことができない

・予後予測にも使えない

などなど・・

それでは、ブルンストロームステージの評価方法をご説明していきます。

評価の基本

まずは、各ステージの定義は以下のように決められていることを念頭においておきましょう。

上肢、手指、下肢のどれも同じ定義であり、後はそれぞれのテストの方法を覚えるだけです。

Stage1

弛緩麻痺

Stage2

基本的な共同運動、または共同運動の要素のいくつかが連合反応として現れるか、最小の随意運動の反応が現れる。

この時には痙縮が発達し始める。

Stage3

共同運動を随意的に行え(必ずしもすべての共同運動の要素がすべての共同運動の要素が可動範囲の全域にわたって行える必要はない)。

痙縮はさらに増大し、重度になってくる。

Stage4

いずれの共同運動にも従わないいくつかの運動の組み合わせが、困難であるができるようになり、徐々に容易になっていき、痙縮は減少しはじめる

Stage5

基本的な四肢の共同運動が、運動時にその優位性を失っていくので、より難しい運動の組合せができるようになってくる

Stage6

痙縮の消失により、個々の関節運動が可能になり、協調性が正常に近づいていく

Stage4~6は全て共同運動からの分離の時期です。Stageが上昇するにつれて随意運動が強くなり痙縮が軽減していきます。

共同運動パターンと表現の仕方

共同運動パターンをまとめると以下の通りです。

臨床上の静止場面で同じような患者さんを目にすることがあるかもしれません。

全ての部位が全く同じ状態であれば、この患者は

屈曲共同運動パターン

伸展共同運動パターン

と表現しても良いのですが、これにドンピシャな状況は非常に少ないです。

そのような場合は、

屈曲共同運動パターン様に手指屈曲・前腕回内・肘屈曲、肩は内旋・内転の状態になっている

というように、各部位の状態を明確に表現されると良いでしょう。

安静時なのか、抗重力位なのか、歩行などの動作中なのかと行った状況も重要なので、そのあたりも表現できるように評価しておくと良いと思います。

6段階の信頼性

ブルンストロームは上記の6つの段階の評価方法が患者の回復段階を反映するかを確認するため、118名の患者を用いて評価の信頼性を検証しています。

結果は、どの患者も6つの回復段階のなかの1つ、または2つに分類ができ、評価表は回復過程の基準に一致するものでした。

また、経過中に何度か評価が行われていますが、1人として段階を飛び越えることはありませんでした。

段階間で絶対的な境界線を引くことはできず、いくつかの症例ではStage2~3、4~5、5~6のような分類を示しました。

これは、一つの段階から次の段階に移行する時期を示すこともできるものと考えられました。

ここからは、ブルンストロームの各評価方法の詳細を掲載しています。

ブルンストロームステージの評価は上肢、手指、下肢に分けて行います。

なお、各ステージにはいくつかのテストが用意されていますが、そのテストの一つでもできれば次のステージ段階に移ることを覚えておきましょう!

上肢(肩および肘)の運動テスト

Stage1

患側上肢に随意運動が全く触れない。

体幹の運動はやや可能であるが、こまかな検査をするにはまだ十分ではない場合がしばしばある。

他動的に動かすと重く感じられ、運動に対する抵抗は殆どかあるいは感じられない。

Stage2

基本的共同運動、または要素が連合反応として、あるいは患者自身の随意的運動により出現してくる。

痙縮は発現しているが、著明ではない。

Stage3

基本的共同運動、または要素が随意的に行われ、はっきりと関節運動を示すようになる。痙縮は増大し、この段階では著明である。

屈曲共同運動をまず最初に検査し、患者には“耳の後ろを手で搔くようにしてみなさい”というような指示を与えて肩の外転、外旋、肘の屈曲と回外を行わせる(肩甲骨の挙上、後退は必ずしも自動的にはあらわれない)。

伸展共同運動は、患者の両膝の間に置いた検者の手掌に触れるように命令して、前方、下側方向に手を伸展させてやるようにする。

Stage4

Stege3の基本的共同運動から逸脱したいくつかの組合せが可能となり、以下の3つで評価する。

①腰の後ろにてをもっていく

②前方水平位に腕を挙上する:肘は完全伸展位されていなければらない

③肘90°屈曲位で前腕の回内外をおこなう:肩の外転が生じると重力の影響で前腕が回内位になってしまうたため肘を対側にきちんと保持した状態で行ってもらう

Stage5

痙縮が減弱し基本的共同運動パターンから比較的独立しており、より難しい運動の組合せができるようになって個別的な関節運動が可能になってくるが、患者はこれを行うために相当集中しなくてはならない。

以下の3つで評価し、どのテストも肘は完全伸展位で行われなければらない。

①横水平位に腕を挙上する

②前方頭上に腕を挙上する

③肘伸展位で回内外をおこなう:前方水平位と横水平位に腕をあげさせておこなう

Stage6

分離した関節運動が自由にできるようになり、非麻痺側と同じように麻痺側が動かせる。

しかし、自動運動スピードをあげておこなわせるとぎこちなさがみられる。

Speed test

回復段階のいずれかにおける痙縮を検査するために使用される。

テストに使用される運動は、屈筋や伸筋共同運動によく似ているので、屈曲運動から完全に独立している必要はない。

このテストはStage4~6で適応され、以下の2つの運動が使われている。

①手を大腿から顎へもっていく:肘の屈曲が完全にできなければならない

②手を大腿から反対側の膝へもっていく:肘の完全伸展ができなければならない

両テストとも、背もたれ座位にてテストする手を大腿の上におき、手をかるく握る。

①では、前腕を回内外中間位から開始し、手が顎に触れた時は母指と人差し指との間の部分に顎があたるように行う。

②では、前腕回内位から開始し、握った手で運動を行うときには一定の場所に正確に触れるようにしなければならない。

ストップウォッチを使用し、5秒間で反復できる回数を、非麻痺側と麻痺側でそれぞれ数える。

スピードが遅い時には痙縮が著明であり、このテストによって肘の屈筋、伸筋の痙縮の情報を得ることができる。

痙縮についてもっと詳しいことが知りたい時には、他の筋グループについてテストをすることもできる。

手指の運動テスト

Stage1

弛緩麻痺

Stage2

自動的手指屈曲がわずかに可能か、全然できない。

Stage3

全指同時握り、鉤形握り(ハンドバッグをさげて持つような握り方)で握ることはできるが、離すことができない。

随意的手指伸展不能で、反射による伸展は可能である。

Stage4

(母指と示指の間でカードを挟むような)横つまみは可能だが、母指を動かして放すことは不可能。

半随意的手指伸展は少範囲で可能である。

Stage5

対立つまみ(親指と各指の指腹を合わせられる)、筒握り(筒を握るような握り方)、球握り(ボールを握るような握り方)はだいたいできる。

動きは不器用で、機能的な使用は性下されている。

随意的な伸展は可能だが、その範囲は一定しない。

Stage6

すべての種類の握りが可能になり、巧緻性も改善し、全可動域の伸展ができる。個別の手指の運動は、非麻痺側に比べて正確さは劣るけども可能。

下肢の運動テスト

最初は背臥位でテストし、それから座位、立位で行う。

Stage1

弛緩麻痺

Stage2

下肢のわずかな随意運動。

Stage3

座位や立位での股、膝、足の屈曲ができる。

Stage4

以下の2つのどちらかができる。

①座位で膝を90°以上屈曲して、足を床の後方にすべらせる。

②座位で踵を床から離さず随意的に足背屈が可能。

Stage5

以下の2つのどちらかができる。

①立位で股伸展位、またはそれに近い状態で膝屈曲を分離運動として可能。

②立位で膝伸展位、足を前方に踏み出した姿勢となり、足背屈が分離運動として可能。

Stage6

以下の2つのどちらかができる。

①立位で股外転が骨盤の挙上による範囲を越えて可能。

②座位で内側および外側ハムストリングスの交互運動による膝における下腿の内外旋が、足内反と足外反を伴って可能(→半腱様筋と大腿二頭筋の交互収縮が、膝下部の腱を触れることによって確かめられる)。

注意点

ブルンストロームステージは臨床現場で頻繁に用いられていますが、評価法として多くの問題があります。

「実際にテストしてみたけど、これってStage3?それともStege4??」なんてことは頻繁にあります。

評価方法が適切にできていないのか?

というと、そんなことはありません。

ブルンストロームステージの評価法はそういう細かい規定がないので、そうなってしまうのが正解なんですね。

このようなブルンストロームステージの評価法の問題に関しては、以下の記事に詳細を掲載しておりますのでそちらをご参照ください。

以下の記事には、上田敏先生がブルンストロームの評価法の問題点を基に考案された上田式12段階片麻痺機能検査の内容をまとめています。

https://connect-clinicians.com/brain-nerve/paralysis-assessment-uedagrade/

予後予測への活用方法

ブルンストロームステージを予後予測へ活用する方法は以下のページで紹介にご説明していますので興味がある方はこちらをご参照ください 。

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参考資料

1)片麻痺の運動療法 [ シグネ・ブルンストローム ]:片麻痺の運動療法.医歯薬出版.1990

※ブルンストロームのこの著書はなかなか手に入らないのでゲットできたらラッキーですが、みなさんもぜひ一度原本を読んでみてください。

運動麻痺を治療するためのおすすめ書籍

本日は以上で終わりです。

今回でブルンストロームステージの評価方法は十分に理解できたと思いますので、ぜひこれを臨床で有効活用してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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たけ
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