脳・神経

運動失調の評価 ICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale:運動失調の国際評価尺度)

こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

今回は、失調症状を定量的に評価できるICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)について解説します。

 

ICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)とは?

ICARSは脊髄小脳変性症に対する薬物療法の効果判定のために開発された評価法であり、良好な信頼性と妥当性が検証されていることから広く国際的に用いられています。

本邦では、失調症状を呈する他の疾患、たとえば脳卒中の小脳病変や脊髄小脳変性症などの運動失調を呈する疾患などにも用いられることが多く、失調症状を定量化する評価法として活用されています。

適応

脊髄小脳変性症、脳卒中小脳病変、橋病変などの運動失調を呈する疾患

評価方法

ICARSは臨床症状の評価として、立位歩行などの平衡機能、四肢協調運動、構音、眼球運動についてそれぞれ評価し、0~100点で点数化することで失調症状を総合的に評価します。

具体的な点数と項目は以下に掲載します。項目の通りに点数化していきます。

Ⅰ、姿勢及び歩行障害

1.歩行能力

0)正常
1)ほぼ正常だがつぎ足歩行ができない
2)異常だが支持なしで自立歩行可能
3)自立歩行可能だが著しく動揺、歩行転換は困難
4)伝い歩きで10m歩ける
5)一本杖で歩行可能
6)歩行器歩行(手押車、二本杖)で歩行可能
7)介助歩行
8)歩行不可能

2.歩行速度

0)正常
1)わずかに遅い
2)かなり遅い
3)著しく遅い
4)自力での歩行は困難

3.開眼での立位保持

0)10秒以上片足立可能
1)閉脚立位保持可能だが、片足立ちは10秒未満
2)閉脚立位保持可能だが、Mann試験では保持不可能
3)閉脚立位保持不可能、開脚立位は保持可能
4)閉脚立位保持不可能、開脚立位は動揺するが可能
5)自立立位保持不可能、支え立ち可能
6)支え立ち不可能

4.開眼立位での開脚度

0)10cm未満
1)10cm以上25cm未満
2)25cm以上35cm未満
3)35cm以上
4)立位保持不可能

5.開眼閉脚立位での動揺

0)正常
1)わずかに動揺
2)頭部で10cm未満の動揺
3)頭部で10cm以上の動揺
4)すぐに転倒

6.閉眼閉脚立位での動揺

0)正常
1)わずかに動揺
2)頭部で10cm未満の動揺
3)頭部で10cm以上の動揺
4)すぐに転倒

7.座位の状態

0)正常
1)体幹のわずかな動揺
2)体幹と両脚の中等度の動揺
3)強い動揺
4)座位保持不可能

Ⅱ、運動機能 ※14の試験以外は左右ともにそれぞれの点数を評価する

8.膝脛試験:運動分解と企図振戦

0)正常
1)軸方向・側方のずれはないが運動は円滑でなく運動分解を認める
2)軸方向にずれを認める
3)側方へのずれを認める
4)側方への大きなずれを認める、もしくは検査不可能

9.踵膝試験:動作時振戦

0)正常
1)踵が膝に到達すれば速やかに振戦が止まる
2)踵が膝に到達して10秒以内に振戦が止まる
3)踵が膝に到達してから10秒以上振戦が続く
4)踵が膝に到達したあと振戦が持続し止まらない、もしくは検査不能

10.指鼻試験:運動分解と測定異常

0)正常
1)軽度の動揺
2)2相性の運動分解もしくは中等度の測定異常
3)2相性以上の運動分解もしくは著しい測定異常
4)鼻に到達できない程の強い測定障害

11.指鼻試験:指の企図振戦

0)正常
1)軽度の振戦
2)振幅10cm未満の振戦
3)振幅10~40cmの振戦
4)振幅40cm以上の振戦

12.指指試験:動作時振戦と動揺

0)正常
1)軽度の動揺
2)振幅10cm未満の動揺
3)振幅10~40cmの動揺
4)振幅40cm以上の動揺

13.回内回外変換運動

0)正常
1)わずかに不規則で遅い
2)明らかに不規則で遅いが、肘は動揺しない
3)著しく不規則で遅い、肘が動揺する
4)運動は完全にばらばら、もしくは不可能

14.アルキメデス螺旋の描画

0)正常
1)パターンをわずかに外れるが、測定障害による急激な変化はない
2)パターンを完全にハズレ、測定障害や線の交叉が生じる
3)測定障害や運動分解による大きな障害がある
4)ほとんど螺旋の形にならない、もしくは不能

Ⅲ、言語障害

15.構音障害:発話の流暢度

0)正常
1)わずかな流暢性の障害
2)中等度の流暢性の障害
3)きわめて遅く強い構音障害
4)話せない

16.構音障害:発話の明瞭度

0)正常
1)不明瞭発話を疑わせる
2)不明瞭発話であるがほとんどの話は理解可能
3)強い不明瞭発話であり発話が理解できない
4)話せない

Ⅳ.眼球運動異常

17.注視誘発眼振

0)正常
1)一過性
2)持続性だが中等度
3)持続性で高度

18.追視運動の異常

0)正常
1)わずかに衝動性
2)明らかに衝動性

19.眼球運動での測定障害

0)正常
1)明らかな測定過大や測定過小がある

8~13項目の試験は、左右両側ともに点数を評価します。

姿勢と歩行で34点、下肢の運動機能も合わせると50点と、障害が進行すると日常生活上で身体的介助の負担が大きくなるものに重きを置いた配点がされています。

上肢運動機能は36点、構音障害は8点、眼球運動障害は6点となっています。

なお、ICARSは神経学的症状を満遍なく評価でき、経時的な変化を反映しやすいですが、評価項目の多さから測定には時間を要するという欠点があります(15分程度)。

患者さんの負担も大きいことに留意しましょう。

ICARSより短時間で測定が行える小脳性運動失調の評価法としては、日本語版Scale for the assessment and rating of ataxia (以下SARA)が有用です。

SARAはICARSよりも小脳性運動失調に特化した評価方法であり、ICARSの1/3の時間(4分)で測定ができることや、評価者間信頼性が高い(検査者間の誤差が少ない)こと、Barthel indexやICARSと有意な相関があることが確認されています。

SARAに関する記事は以下をご参照ください。

小脳性運動失調の評価 日本語版SARA(Scale for the assessment and rating of ataxia)小脳性運動失調の評価について知りたいですか?本記事では、小脳生運動失調の評価である日本語版SARA(Scale for the assessment and rating of ataxia)について丁寧に解説しています。小脳生運動失調をマスターしたい方は必見です!...

以下にICARSを臨床でも使用しやすいように評価用紙を作成しました。

使用する際は、印刷していただき、評価毎に各チェックボックスに印をしていくと円滑に評価ができると思いますので使ってみてください。

結果の解釈と使い方

無症状0点〜最重症100点であり、点数が高いほど神経学的症状が重度です。

点数による重症度の層別化などができるかどうかは、僕が調べた限りではありませんでした。

しかし、このように神経学的症状を定量的に評価することで、患者さんの全体的な重症度や各症状の重症度がどの程度のものなのかを表現でき治療効果の比較や症状が出現している箇所への介入方法の検討などが客観的に行えます。

ちなみに、ICARSを用いて歩行自立度のカットオフ値を検討した報告がありました。

山田誠,大塚功,他:小脳脳血管障害患者の運動失調評価尺度(ICARS)と歩行自立度の検討について.相澤病院医学雑誌第:2012;10:23-26.

対象は急性期の小脳梗塞・小脳出血34例で、リハ開始時と終了時のICARSを用い、急性期退院時の歩行自立のカットオフ値をROC曲線で求めており、結果はリハ開始時ICARSスコアが29点(感度87.5%、特異度22.2%)以下、急性期退院時のICARSスコアが17点(感度75.0%、特異度11.1%)以下であれば、急性期病院退院時には歩行動作が自立している可能性が高い

ただし、運動失調が重度で歩行が自立する患者は少なく、運動失調が軽度にもかかわらず歩行が自立しない患者は多いことがわかる結果であったことから、小脳病変の脳卒中における歩行自立を阻害する因子は運動失調だけでなく、他の要因の影響が関係している可能性があり今後の検討が必要であった。

ご参考までに!

本日は異常で終わります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

ABOUT ME
たけ
たけ
理学療法士&ピラティスインストラクターをメインに姿勢・パフォーマンス改善のプロとして活動中! 過去には世界で最も患者が多い病院、某大学病院で超急性期のリハビリテーションに貢献。その他にも認定脳卒中、呼吸療法認定士、ガンリハなどの資格を保有。 超急性期から障害予防までの多岐にわたる分野の記事を執筆中!
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