こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians )です!
今回は脳画像を見る上では欠かせない中心溝の同定のお話しです。
はじめて脳画像に触れる人や学生さんでも中心溝の同定が簡単にできる方法を掲載していますのでご参考までに!
ざっくり内容を見る
脳画像をみるためには中心溝の同定が必須
脳画像をみる際に第一に重要になるのが、各脳回の位置です。
脳回の位置関係は脳溝を同定すればすぐにはっきりしますので、脳溝をしっかり把握できるようになれば簡単ですね。
そして、脳溝の中でも特に重要なものは中心溝です。
なぜなら、中心溝はその前方に一次運動野、後方に一次感覚野が隣接しており、この両者の脳回の同定につながるなど、中心溝をみつけるとその他の脳溝の位置がはっきりしてくるからです。
中心溝を同定しようとすると、おのずと前頭葉から頭頂葉の溝のほとんどが把握できるようになり、それより下のスライスの脳回の同定にもつながってきます。
また、ここで出てきた一次運動野と一次感覚野は伴に体部位局在(運動と感覚のホムンクルス)があり、この部位が損傷すると損傷個所の機能低下が起こることで作業や動作能力の低下をきたします。
ご自身が担当される脳損傷患者さんの損傷有無をみることで運動麻痺や感覚障害があるのかがわかるだけではなく、将来的にこれらの症状が回復する余地があるのかといった予後予測にも用いることができるため、まずは中心溝の同定をできるようにしておくことは非常に大切です。
では、さっそく中心溝の同定方法を説明していきます。
中心溝の位置関係
まずは中心溝の位置ですが、名前の通り、このように脳の中心部にあります。
画像出典:ウィキペディア(Wikipedia) 中心溝 より改変引用
よく見るCTやMRIなどの脳画像では、この右下の水平断面図が示されています。
画像出典:ウィキペディア(Wikipedia) 中心溝 より改変引用
水平断面で
「ぱっと見で前後径の中心付近にある溝が中心溝」
です。
・・これでは大まか過ぎてわかりにくいですね。
ただ、眼窩外耳孔面と平行な断面で撮影する頭部CTでは中心溝は頭蓋前後径のほぼ真ん中に位置するので、だいたいの目安としてこれを知っておいても良いかなと思います。
では、ここからはちゃんと目印をみつけながら探す方法を紹介します。
SFS-PrCS sign:中心前溝は上前頭溝と合流する
個人的にはこの方法が一番わかりやすいかと思います。
上前頭溝は前頭葉にあり、大脳縦裂の1本外側を前後に走る脳溝です。
そして、上前頭溝の後端は中心前溝と混じり合い、中心前溝は上前頭溝に連続して後端で鋭角に折れ曲がり、前外側に伸びるような形状になっています。
カタカナの「レの字」のようになっています。
中心前溝の1本後ろにあるのが中心溝であり、中心溝は他の脳溝と独立しています。
画像出典:ウィキペディア(Wikipedia) 中心溝 より改変引用
IPS-PoCS sign:中心後溝の後端は頭頂間溝に合流する
このスライスの画像だと分かりにくいですが、もう少し頭頂側のスライスをみれば中心後溝(青色)と頭頂間溝(水色)の線が混じるような画像になります。
画像の水色の線はイメージです。
先ほど同様にカタカナの「逆レの字」です。
中心後溝の1本前にあるのが中心溝です。中心溝は他の脳溝と独立しています。
画像出典:ウィキペディア(Wikipedia) 中心溝 より改変引用
pM bracket sign:中心溝の内側端は帯状溝縁部のすぐ前方ある
矢状面上・水平面のどちらでみても、帯状溝の後端部(帯状溝縁部)は中心溝の後方に位置しています。
水平面では帯状溝縁部は中心溝の内側端の後方部に位置していますので、帯状溝後縁部を見つけてすぐ前の外側方向にあるのが中心溝になります。
画像出典:ウィキペディア(Wikipedia) 中心溝 帯状溝 より改変引用
precentral knob sign:中心前回の手指運動野や後方に凸の形状になる
中心溝は正中から3cmぐらいのところを中心に後方へ凸(もしくは逆Ω)のような形状をしています。
この突出部分の内側には、―次運動野の手の運動領域(図の*)が存在することで有名です。
以前に予後予測の記事で脳画像のお話をしていましたが、上記のようにどの運動領域が損傷しているかは予後予測を行う上で非常に重要です。
この部位が完全に損傷している症例は手指の改善は難しい可能性が非常に高いです。
thick PrCG/thin PoCG signs:中心前回と中心後回は厚みが異なる
脳回の厚み(前後幅)は中心前回>中心後回となっていますので、脳回が厚い方が中心前回、薄い方が中心後回となります。
これは皮質回白質の幅も同様です。
medullary branch sign:髄枝徴候
この方法は、半卵円中心の水平断面で使用できます。
脳溝は若年者や占拠性病変がある場合には幅が狭いため、わかりにくくなるため、このような場合に有用です。
※占拠性病変:脳腫瘍や脳出血のように頭蓋内の空間を占拠するような病変のこと。
白質髄枝は半卵円中心から外側に伸びており、前方から上前頭回、中前頭回、中心前回、中心後回、上頭頂小葉、下頭頂小葉の6つに配列していますので、これらの脳回が一挙に見えます。
中心前回と中心溝回の間にある溝が中心溝ですね。
①SFS-PrCS sign:中心前溝は上前頭溝と合流する
②IPS-PoCS sign:中心後溝の後端は頭頂間溝に合流する
③pM bracket sign:中心溝の内側端は帯状溝縁部のすぐ前方ある
④precentral knob sign:中心前回の手指運動野や後方に凸の形状になる
⑤thick PrCG/thin PoCG signs:中心前回と中心後回は厚みが異なる
⑥medullary branch sign:髄枝徴候
上述した6つの同定方法の脳画像は、頭頂部から半卵円中心までの構造ができるだけみられるような同一画像を一枚だけ用いて作成したので解説が若干わかりにくくなったかもしれませんが、①~⑤までの方法は掲載した画像よりもさらに頭頂部側の画像をご自身で確認して頂けるとより明確にわかると思います。
今回、中心溝の同定方法を一部掲載しましたがいかがでしたでしょうか?
他にもいろいろな同定方法があるようですよ。
たくさん覚える必要はないかもしれませんが、脳溝・脳回には個人差があり、単一の方法だけを用いて判断を行うことは非常に難しいと思いますので、今回挙げたものだけでも組み合わせれば中心溝の同定の精度はかなり上がると思います。
さっそく使ってみてください♪
なお、最初に触れたとおり、中心溝が同定できると皮質脊髄路(錐体路)の損傷有無もみることができます。
中心溝の同定方法が理解できた方はこちらの記事で皮質脊髄路の見方も確認してみてください。
脳画像を見るためのおすすめ書籍
病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経
初心者~中級者向け。脳神経の解剖、疾患の病態・生理や医学的管理や内服治療など、広く浅く掲載されています。しかし、浅いといっても内容は十分。脳神経疾患に携わる看護師や療法士は必ず持っている、もしくは見た事があるというぐらい有名で万能な著書
脳卒中ビジュアルテキスト
初心者向け。フルカラーで図が多く、内容も読み易い。広く浅くといった感じではあるが、必要最低限のことが掲載されていると思います。個人的には、最初に掲載されているスライス毎の構造物と脳血管の支配領域の図があったことが素敵だと思います。
神経局在診断―その解剖,生理,臨床
高次脳機能障害学
初心者~中級者向け。名前の通り高次脳機能障害のことに関して書かれています。高次脳機能障害というと分かりにくい本が多い印象かと思いますが、これはスラスラ読めますね。脳画像のスライスに関する項があり、責任病巣に関してもちゃんと書いてあります。また、高次脳機能障害の評価法や対応も書かれているので参考になりますよ。
脳の機能解剖と画像診断
上級者向け。本当に画像オンリーのことが書いてあるといっても良いのではないでしょうか。実際のCT、MRIと対応させて脳の構造物が細かく掲載されています。水平面だけではなく、前額面、矢状面の画像もちゃん細かく掲載されています。血管の支配領域も脳幹部まで細かく掲載されていたりと、とにかく細かいところまで手が届く感じで僕は結構好きです。これが逆に分かりにくい人もいると思いますが・・
CT・MRI画像解剖ポケットアトラス(1)第4版 頭部・頚部
初心者~上級者向け。脳画像のみかたの本というよりは、脳画像のカンペですね。臨床で脳画像をみていて、これってなんだったけ?と思うときにかなり重宝します。今回紹介する本は、全てA4サイズ以上ですが、これはポケットに入っていつでも見られる本です。
脳画像からみた脳梗塞と神経心理学
中級者~上級者向け。脳梗塞に限定されて掲載されており、内容は全体的にみて濃い。上記で紹介した高次脳機能障害学と似ているところはあるが、こちらの方が医者目線が強くマニアックな印象。頻回に症例の実際の画像がでてくるので症例報告などが好きな人はこちらの方が読み易いかもしれません。
https://connect-clinicians.com/brain-nerve/paralysis-assessment-uedagrade/
本日は以上で終わりです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
充実の“note”で飛躍的に臨床技術をアップ
CLINICIANSの公式noteでは、ブログの何倍もさらに有用な情報を提供しています。“今すぐ臨床で活用できる知識と技術”はこちらでご覧ください!
実践!ゼロから学べる腰痛治療マガジン
腰痛治療が苦手なセラピストは非常に多く、以前のTwitterアンケート(回答数約350名)では8割以上の方が困っている、35%はその場しのぎの治療を行っているということでしたが、本コンテンツはそんな問題を解決すべく、CLINICIANSの中でも腰痛治療が得意なセラピスト(理学療法士)4名が腰痛に特化した機能解剖・評価・治療・EBMなどを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する整形疾患は勿論、女性特有の腰痛からアスリートまで、様々な腰痛治療に対応できる内容!臨床を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、腰痛治療が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる足マガジン
本コンテンツでは、ベテランの足の専門セラピスト(理学療法士)6名が足に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する足の疾患は勿論、小児からアスリートまで幅広い足の臨床、エコー知見などから足を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、足が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる肩肘マガジン
本noteマガジンはCLINICIANSメンバーもみんな認めるベテランの肩肘治療のスペシャリスト(理学療法士)5名が肩肘の治療特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術として提供してくれます。普段エコーなどを使って見えないところを見ながら治療を展開している凄腕セラピストが噛み砕いてゼロから深いところまで教えてくれるので肩肘の治療が苦手なセラピストも必見のマガジンです!
YouTube動画で“楽しく学ぶ”
実技、講義形式、音声形式などのセラピストの日々の臨床にダイレクトに役立つコンテンツが無料で学べるCLINICIANS公式Youtubeチャンネルです。EBMが重要視される中、それに遅れを取らず臨床家が飛躍的に加速していくためにはEBMの実践が不可欠。そんな問題を少しでも解決するためにこのチャンネルが作られました。将来的に大学や講習会のような講義が受けられるようになります。チャンネル登録でぜひご活用ください♪登録しておくと新規動画をアップした時の見逃しがなくなりますよ!
※登録しておくと新規動画をアップした時に通知が表示されます。
なお、一般の方向けのチャンネルも作りました!こちらでは専門家も勉強になる体のケアやパフォーマンスアップに関する動画を無料で公開していますので合わせてチャンネル登録を!